2012年5月12日土曜日

4/9提出公開質問状の回答(書面、5/10)

原発の廃炉を求める北九州市民の会
北九州のコドモのミライ 様

北九州市

2012年4月9日付 放射能に汚染された「がれき受け入れ」に関する公開質問状に関しまして、次のとおり回答いたします。



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質問1
1、政府は、岩手県・宮城県の震災がれき約2,045万トンのうち、20%に相当する約401万トンを被災地以外の広域で処理するとの方針を示しています。このことに関連していくつか質問します。

①、20%に相当する約401トンのがれきを地元で処理できない理由を、分かりやすく、具体的に説明してください。
②、北九州市は石巻市のがれきの受け入れを検討されていますが、石巻市のがれきの総量、地元処理量、広域処理量とその種類、地元で処理できない理由をお答えください。
③、すでに受け入れを決めている東京都などが処理する予定のがれきの総量等を自治体別にお答えください。3月31日までの実績と今後の予定量でお願いします。
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回答
本市では、本年3月12日に市民の代表である市議会において、被災地のがれきを受け入れるべきとの決議が全会一致で決議されたことと、さらに国や被災地から要請を受けたことに基づき、「がれきの処理なくして被災地の真の復興はあり得ない」と考え、検討を進めています。受入対象としている石巻市の災害廃棄物の処理については、宮城県が策定した災害廃棄物処理の実行計画に基づき行われています。
被災地では現在、既存の施設に加えて、仮説の焼却炉を設置するなどにより処理に取り組んでいますが、処理能力は依然として不足し、また、最終処分場についても容量が不足していると聞いています。県内での再利用、処理を出来る限り行ったうえで、なお県内での処理が困難と整理し、県の災害廃棄物処理の実行計画に位置づけたものを対象として広域処理が要請されています。
※参考資料
・平成24年3月16日付 「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法第6条第一項に基づく広域的な協力の要請について」
・環境省「広域処理に関する地方自治体の状況」〔H24.5.8時点で把握しているもの〕
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質問2、3
2、がれきが復興の足かせになっているというマスコミ等の報道がありますが、それは事実ですか? 事実であるとすれば、どのように復興の足かせになっているのか具体的にお答えください。

3、宮城県は仙台市に仮設焼却施設を設置し、塩竈市、多賀城市、七ヶ浜町で発生したがれきを処理することにしていますが、その焼却施設で石巻市のがれきも合わせて処理することはできないのですか? あるいは石巻市に仮設の焼却施設を建設して処理することはできないのですか?
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回答
被災地において、次のようにがれきが復興事業のさまたげになっているとされています。
〔環境省ホームページより〕
『生活圏に散在していたがれきのほとんどは、現在、一時的な置き場である「仮置き場」に運び込まれていますが、状況は自治体によってさまざまです。仮置き場をさらに確保することは地形的にむずかしく、がれきが山積みされ、火災の危険性が高まっている自治体もあれば、町有地のほとんどが山林であるために限られた民有の平地に仮置き場が設置されている自治体もあります。こうした自治体では、大量のがれきの存在自体が復興事業のさまたげになっていたり、ひいては経済活性化のための企業誘致が滞る要因にもなっています。地元でのがれき処理が雇用を生むという考え方もありますが、処理による雇用は短期間のものであり、本格的な復興事業の中で長期的な雇用を生み出していく方がのぞましいと考えています。
また、夏に向け気温が上がるにつれて、自然発火による火災の危険性、腐敗による悪臭、ハエの発生などの問題が深刻化します。さらに「積み上がったがれきを見るたびに、あの時のつらい気持ちがよみがえってくる」といった住民の方々の感情は、察するに余りあるものがあります。』
なお、質問1、で回答していますように、石巻市の災害廃棄物の処理については、宮城県が策定した災害廃棄物処理の実行計画に基づき行われています。また、石巻市では域内処理のため、仮設焼却炉5基〔日量処理能力300トン×5基:本年8月までに全基稼動予定〕の建設や木くずのリサイクル業者での処理(400t/日)等が進められています。

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質問4
4、がれきの広域処理が進まないことの背景に、放射能汚染への懸念があると思います。この問題についていくつか質問します。

① 原発等で発生する放射性物質は、放射性セシウム濃度が1キログラムあたり100ベクレルを超える場合は特別な管理下に置かれ、原発敷地内や青森県六ケ所村の低レベル放射性廃棄物管理埋設施設に貯蔵・処理されています。放射性物質の取り扱いについての北九州市の見解をお聞かせください。
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回答
本市では、受入れ対象物は基本的に木くずを中心とした可燃物で、放射性セシウムの放射能濃度が100Bq/kg程度以下、「放射性物質に汚染されたものとして取り扱う必要がない」とされているクリアランスレベル程度以下の災害廃棄物を想定しています。
このクリアランスレベルの考え方は、どのような取り扱い方をしても、年間に0.01mSvの被ばく量に収まる小さい値であり、健康に対する影響を無視できる量として設定されています。
また、焼却処理により飛灰の放射性セシウムは最大330Bq/kgになる可能性があると試算していますが、本誌の焼却施設や埋立処分場において、安全に処理、管理できるものと考えています。

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② がれきの汚染濃度の測定は、誰が、どのようにして行いますか? また、がれきの全量測定を行う予定はありますか?

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回答
広域処理にかかる放射能の測定は、環境省の『災害廃棄物の広域処理の推進について〔東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン〕』〔以下「広域処理ガイドライン」という。〕では、一次仮置場で放射性セシウム濃度を測定し、二次仮置場から搬出する際に空間線量率を測定し、確認することとされています。
一方、本市が受入対象としている石巻市の災害廃棄物については、すでに宮城県によって各仮置場ごとに放射能濃度の測定が行われています。さらに、本市では、1日に2回以上、災害廃棄物の放射能濃度の測定を行い100Bq/kgを下回ることを確認し、また、フレコンバッグごとに放射線量の測定を行うこととしており、国が広域処理ガイドラインで示している以上に測定頻度を高めることにより、市民の安心感に配慮した取り組みを行う計画としています。

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③ 行わない場合、汚染の実態をどのように評価されますか。
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回答
上記②の回答している測定を行う予定としています。

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質問5
5、環境省は、ごみ焼却の排ガス中の放射性セシウムは、バグフィルターによりほぼ100%除去できると説明していますが、これは事実ですか? できないとすれば、何%が環境中に出ていきますか?

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回答
環境省の広域処理ガイドラインによると、廃棄物焼却炉の実証実験で、バグフィルターにより99.9%以上の放射性セシウムが除去できることが確認されています。また、実際に放射性セシウムを含む廃棄物の焼却が行われている多くの施設における測定の結果、排ガス中の放射性セシウムの濃度は不検出または極めて微量という結果が出ています。

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質問6
6、北九州市の焼却施設の性能はどうなっていますか? 放射性セシウムは100%除去できますか?

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回答
北九州市の3焼却施設の全てにバグフィルターが設置されており、ほぼ100%放射性セシウムは除去できると想定しており、試験焼却により確認することとしています。

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質問7
7、原子力安全委員会が定めた、「発電用軽水型原子力施設における放出放射性物資の測定に関する指針」(2001年3月29日改訂)では、環境中に放出される気体廃棄物及び液体廃棄物中の放射性物質の放射能量を測定するための標準的な方法が定められています。それによると放射性セシウムの場合、「1分間で50リットル、1週間採取」して、「ゲルマニウム半導体スペクトロメータで4000秒」計測することとなっています。北九州市が行う予定の試験焼却でも、この標準的な方法で計測する予定ですか? また、ストロンチウムやプルトニウムの計測はどのようにして行う予定ですか?

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回答
本市が行う試験焼却における放射能濃度の測定は、環境省が示した測定方法〔「放射能濃度等測定方法ガイドライン」:環境省平成23年12月〕に基づいて測定することを予定しています。ガイドラインでは、排ガスは15L/minで4時間、合計3000L程度、ばいじんは円筒ろ紙で採取し、ゲルマニウム半導体スペクトロメーターで1000から2000秒測定するように示されています。
なお、ストロンチウムやプルトニウムについては、文部科学省による核種分析によって、「セシウム134、137の50年間積算実効線量(50年間被ばくし続けた場合の積算線量)に比べて、ストロンチウムやプルトニウムの50年間積算実効線量は非常に小さいことから、今後の被ばく線量評価や除染対策においては、セシウム134、137の沈着量に着目していくことが適切である」とされています。これを踏まえ、環境省では、放射性物質に汚染された廃棄物の処理にあたっては、放射性セシウムの影響に着目して安全評価基準をつくっていることから、本市においても放射性セシウム以外の核種の測定を行う予定はありません。
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質問8
8、放射能で汚染されたがれきを燃やすことの問題について、いくつか質問します。
①、焼却施設で働く労働者や周辺住民への放射線防護対策はどのようにする予定ですか。
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回答
災害廃棄物を焼却処理する工程において、放射線の影響を最も受ける機会の多い作業者は飛灰〔最大想定濃度330Bq/kg〕の積下ろしに従事する場合と想定され、その作業者が受ける放射線量予測値〔0.01177mSv/y〕は一般公衆の年間線量限度である1mSv/yを大幅に下回っており、影響は非常に軽微であると考えられます。
また、1焼却施設で年間受入予定量の全量39,500tを焼却し、0.1%〔バグフィルター捕集率99.9%〕が大気中に放出し、その全量が焼却施設の半径5kmの範囲に降下・沈着すると仮定した場合の面積あたりの年間放射能濃度の予測値は0.05Bq/㎡に対して、福岡県内の土壌の放射性セシウム129.25Bq/㎡〔2009年度・福岡市早良区における放射性セシウム濃度測定〕であり、影響は非常に軽微であると考えられます。
本市では、災害廃棄物の処理を行う場合には市民の安心のために、焼却により発生する排ガスや排水、焼却施設の敷地境界の空間放射線量を定期的に測定し、公表することとしています。
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②、また、メンテナンス等含めて、どのような放射線防護の対策をとる予定ですか。
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回答
焼却施設では通常のメンテナンス時においても、作業員のダイオキシン曝露対策等〔タイベックや防じん防毒マスクの装着等〕を講じて作業に当たっています。本市が災害廃棄物の受入を行った場合のメンテナンス時においては、通常のメンテナンス時の防護対策に加え、作業員の被ばく線量計による管理等を含め、放射線に関する被ばくへの対応を検討しています。
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③、原子力関連施設では、100ベクレル/㎏を超える汚染物質は放射性物質として厳重な管理のもとに置かれています。例えば、「三十分から三年」と言われるほどにバグフィルターの寿命は短いわけですが、放射能に汚染されたバグフィルター等の取り扱いはどうなっていますか。
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回答
一般的に廃棄物焼却炉のバグフィルターの寿命は4~6年程度です。バグフィルター取替時は、バグフィルターの逆洗作業を実施することで、バグフィルターから放射性セシウムを含んだばいじん及び消石灰、助剤等をほぼ完全に除去することが可能であると考えています。また、ばいじん等を除去した後のフィルターは、焼却施設で災害廃棄物と同様に焼却し安全性を確保することとしています。
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④、放射性物質の取り扱いについては、4-①で質問していますが、放射能が濃縮している焼却灰をどのように管理・保管する計画でしょうか。また、その量はドラム缶にしてどの程度になると想定していますか。
⑤、環境省は「埋め捨て」が可能との指針を出していますが、もし、北九州が埋め捨てるという最悪の選択をするとすれば、どこに埋め捨てることになるのでしょうか。また、その場合の放射性物質の封じ込め対策とそれに係る費用はどうなりますか。
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回答
焼却により焼却量の3%程度の飛灰が発生することとなることから、本市焼却施設の年間焼却量約45万トンに災害廃棄物処理量約4万トンを加えて年間約49万トンを焼却した場合、飛灰の発生量は年間約1.5トン程度と見込んでいます。
なお、環境省の広域処理ガイドラインでは、8,000Bq/kgを下回る焼却灰は通常の焼却灰と同様に取り扱った場合においても、周辺住民はもとより最も被ばくを受ける作業者においても、安全に処理することが可能とされています。なお、本市が受け入れを想定している災害廃棄物を処理した場合、飛灰の最大濃度330Bq/kg程度と想定しており、相当安全側の値であるといえます。
また、環境省で示しているデータでは、飛灰中の放射性セシウムは水への溶出が高いことが示されていることから、本市では飛灰の埋立処分にあたっては、響灘西地区最終処分場内の陸域化された区画で即日覆土を行うこと、水となるべく接触しないようにするとともに、放射性セシウムの高い土壌吸着性を考慮して土壌層の上で処分すること、雨水の浸入を防止するため防水シートを被せることとしています。このような措置により基本的に放射性セシウムが溶出することはないと考えています。仮に作業中に雨が降っても、飛灰埋立区画の下に敷かれた土壌層、また、土壌層下部に埋立処分されている土砂、焼却灰などに放射性セシウムが吸着されることから、最終処分場の保有水に溶け出すことはないものと考えています。また、万が一、最終処分場内の保有水に放射性セシウムが検出された場合には、調査を行い、排水処理施設に放射性セシウムの高い吸着能力を有するゼオライトを充填した吸着塔を使用することにより、公共水域に放射性物質が漏出しない対策を講じることとしています。
なお、災害廃棄物を受入れることによって必要となる経費については、国の災害廃棄物処理事業の補助金により措置されます。
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質問9
9、放射能で汚染された震災がれきを燃やせば、必ず低線量被曝が起こります。(*)この低線量被曝で起こる健康被害についての北九州市の見解をお聞かせください。

*1950~89年の40年間にアメリカの婦人(白人)の乳がん死亡者が2倍になりました。その原因を調査した結果、原子炉施設(注1)から160キロ以内にある郡では乳がん死者数が明らかに増加し、以遠にある郡では横ばい、または減少していたことが判明しています。このことから、乳がん死者数の地域差を左右していたのは、原子炉から排出される微量の放射性物質による低線量被曝であることが分かっています。(注2)

注1、軍用・民間用を問わず。
注2、「低線量内部被曝の脅威」ジェイ・マーティン・グールド著、緑風出版、2011年、25P~31P、212P~218Pより。
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回答
国では、平成23年11月9日から12月15日までに全8回にわたり、公開により議論・検討が行われた「体線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の報告書が取りまとめられています。この報告書によると、放射線による発がんリスクは、100mSv以下の被ばく線量では、他の要因〔喫煙や肥満等〕による発がんの影響で隠れてしまうほど小さいため、リスクの明らかな増加を証明することは難しいとされています。
なお、本市が検討している災害廃棄物の処理によって、最も放射線の影響を受ける作業者〔焼却灰の埋立に従事する作業者〕の年間被ばく線量は、0.03mSv/y程度と予測しており、これは一般公衆の年間線量限度である1mSv/yと比較して、非常に低い値であると考えています。
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質問10
10、同じように、がれき焼却による農林水産業、観光業などへの影響も十分に懸念されますが、被害が出た場合の補償等はどのようにお考えですか?
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回答
環境省では、風評被害に対して次のような見解を示しています。
〔環境省ホームページより〕
『がれきの広域処理の対象としているのは、放射性セシウム濃度が不検出または低いものに限っており、科学的にも安全に処理できることが確認されているとしています。このため、本来は風評被害が生じるような性格のものではなく、環境省としても、安全性について説明に万全をつくします。また、放射線量の測定データなど、各種メディアを活用した積極的な広報、がれき受入の先行事例における実績の情報発信など、広報活動を進めている所です。万が一、風評被害による損害が生じた場合には、ご相談の上、国として責任を持って、これを回復するための可能なかぎりの対策を講じます』
なお、本市では、風評被害については、まずはそれを防止するため、受入れる廃棄物や本市の行う処理の安全性を市民に正しく伝え、理解していただくことが重要であると考えています。
そのため、
○市政だよりやちらし、市のホームページ等による詳細で適正な情報の提供
○市民の理解を深めていただくための説明会の実施
○市民へ正しい情報を迅速に伝えてもらうための、報道機関に対する情報提供及び取材への協力 など、市民への広報に積極的に取り組むこととしています。
本市で災害廃棄物を受入れてその処理を行う場合には、その処理の過程で測定した放射線量や放射能濃度のデータは速やかにホームページや報道機関を通じて公表してその安全性を示し、市民の安心につなげていきたいと考えています。
また本市では、「風評被害の防止」については、国において責任を持って国民に安心感を持ってもらえる施策の実施を国に対して要望しています。
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質問11
11、北九州市では、震災後直ちに、東日本大震災被災者受け入れのための「『絆』プロジェクト北九州会議」を立ち上げ伴走型支援を行っています。また、岩手県釜石市に「鉄のまち」つながりとして市職員を派遣し、述べ500人を超える職員が避難所運営や廃棄物処理などの支援を現在も継続して行っています。北九州市はすでに、他の自治体に負けない復興支援の取り組みを行っている実績があります。
北九州市が今後も力を入れるべきは、放射能に汚染された「震災がれきの受け入れ」ではなく、『絆』プロジェクト活動の延長にある、放射能避難地域に相当するところに留め置かれている人たちの「避難・移住・保養」などの援助活動にあるのではないでしょうか。
そして、避難したくてできず、そこに住み続けざるを得ない多くの方々に、放射能で汚染されていない、安心・安全なおいしい食べ物を供給することではないでしょうか。
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回答
災害廃棄物の受入に関する検討は、政府と被災地からの要請を受けて行っています。
災害廃棄物の受入も復興支援の一環であると考えています。
本市はこれまでも被災者の受入れ、生活支援なども行ってまいりましたが、「がれきの処理なくして真の復興はあり得ない」という思いから、検討を行っています。